ローン天秤loan-tenbin
50年ローンで借りても、35年ローンと1円も違わずに返せます。逆はできません。ゆるいローンは、きついローンを兼ねています。
2026-09-26
4000万円を、どちらも全期間固定 3.46% で借ります(50年のほうが金利が高いときの話はあとで)。総返済額は、50年なら 8,416万円、35年なら 6,904万円。差は 1,511万円。やっぱり50年なんて損だ、と言いたくなります。
では、50年で借りて毎月 35年ローンと同じ 164,391円 を払ったら、どうなるでしょう。要る額との差は、そのまま繰上返済に回します。
ちょうど 35年で返し終わり、総返済額は 6,904万円。35年ローンと1円も違いません。
同じことは、ほかの二択でも起きます。毎月払う額が小さいほうを「ゆるい」、大きいほうを「きつい」と呼ぶことにします。ゆるいほうで借りてきついほうと同じ額を払えば、きついほうとぴったり同じになります。
| ゆるい / きつい | ゆるいまま払う | きつい | ゆるいで借りてきついの額を払う |
|---|---|---|---|
| 50年 / 35年 | 8,416万円 | 6,904万円 | 6,904万円 |
| 元利均等 / 元金均等 | 6,904万円 | 6,428万円 | 6,428万円 |
| 5年ルールあり / なし | 7,396万円 | 7,033万円 | 7,033万円 |
50年と35年 — 揃えずに並べる50年と35年 — 返済額を揃える
元利均等と元金均等 — 揃えずに並べる元利均等と元金均等 — 返済額を揃える
5年ルールありとなし — 揃えずに並べる5年ルールありとなし — 返済額を揃える
元金均等は、毎月同じ額の元金にその月の利息を足して払う返し方です。はじめが重く、だんだん軽くなります。5年ルールは、金利が上がっても5年間は毎月の支払いを変えない決まりです。
逆はできません。きついほうで借りたら、少なく払うことは契約が許さないからです。しかもゆるいほうなら、苦しい月は要る額だけを払って、手元にお金を残せます。選べるぶん、ゆるいほうが得です。理屈の上では。
ネットには「※ただしイケメンに限る」という言い回しがあります。ゆるいローンにも、同じ注釈がつきます。
表の数字がそろったのは、誰にも言われていない額を毎月払い続けたからです。50年ローンなら、35年間毎月 24,130円 を自分の意思で繰上返済し続けることになります。途中でやめれば、1,511万円 の差がそのまま戻ってきます。
いちばん怖いのは5年ルールです。1.00% から2年で 6.00% まで上がったとします。支払いが据え置かれているあいだに払いきれなかった利息は積み上がり、最終回に 1,181万円 がまとめて請求されます。総返済額は 1億1,393万円。ルールなしなら 9,238万円 で済んでいました。
2年で 6.00%、ルールありとなし — 揃えずに並べる2年で 6.00%、ルールありとなし — 返済額を揃える
5年ルールは負担を減らす仕組みではなく、先送りする仕組みです。ゆるさのツケは、将来の自分に回ってきます。
金利が違うとき。50年ローンは、35年より金利が高めに決められていることがよくあります。たとえば 0.3% 高い 3.76% だと、50年で借りて 35年ぶんの額を払っても 35年では返しきれず、35年で借りるより 797万円 多くなります。
50年 3.76% と 35年 3.46% — 揃えずに並べる50年 3.76% と 35年 3.46% — 返済額を揃える
繰上返済に手数料や最低額があるとき。毎月こまめに繰上返済できなければ、同じ道はたどれません。
繰上返済したあと。繰上返済したお金は戻りません。ゆるいほうが兼ねていられるのは、払う前までです。
住宅ローン控除は年末の残高で決まるので、繰上返済で残高を早く減らすと控除も減ります。天秤には控除を入れていません。
決めるべきことは、ローンの種類より前にあります。言われていない額を何十年も自分で払い続けられるか、です。
できるなら、ゆるいほうを選んできついほうの額を払えばいい。何も失わないうえに、いざというときにお金を手元に残す余地まで持てます。
自信がないなら、きついほうを選べばいい。スティーブ・ジョブズは、同じ黒いタートルネックを何着も持っていました。毎朝何を着るか考えなくて済むように、とよく語られます。
ゆるいローンは、毎月「多めに払うか、残すか」を問いかけてきます。35年続ければ 420回です。きついローンは、その答えを借りるときに一度で決めてくれます。毎月しなければいけない判断を、一つ減らす。それも立派な選び方です。