ローン天秤loan-tenbin
変動を選ぶと、固定より毎月のお金が浮きます。繰上返済に回すか、運用するか、手元に置くか。これが前の記事で分けた二つめの問いです。
2026-09-22
4000万円を35年。全期間固定 3.46% なら毎月 164,391円、変動 1.00% なら 112,914円。毎月 51,477円 が浮きます。この行き先を決めます。
繰上返済は、これから払うはずだった利息を消す行為です。ローン金利が 1.00% なら、確実に 1.00% で運用したのと同じことになります。値下がりもしませんし、税金もかかりません。
いっぽう、運用で受け取る利子や配当には 20.315% の税がかかります。手取りで並ぶには、税引前でそれ以上の利回りが要ります。
| ローン金利 | 必要な税引前利回り |
|---|---|
| 1.00% | 1.25% |
| 1.50% | 1.88% |
| 2.00% | 2.51% |
| 2.50% | 3.14% |
| 3.46% | 4.34% |
NISA のような非課税の枠を使うなら、税の分は引かなくて済みます。そのかわり値下がりする年もあります。ここで比べているのは確実な利回りどうしです。
安全な置き場所の一つが個人向け国債の変動10年です。2026年9月募集の利率は 年1.95%(税引前)。税を引くと 1.55% です。
変動金利 1.00% のローンなら、繰上返済より手元に置くほうが利回りで勝ちます。分かれ目は 1.55%。ローン金利がこれを超えたら、繰上返済のほうが有利になります。
予算を固定と同じ 164,391円 にして、35年後にいくら残るかで比べます。
| 浮いた 51,477円 の行き先 | ローン 1.00% | ローン 2.50% |
|---|---|---|
| 繰上返済に回す | −195万円 | +196万円 |
| 手元に置く(税引後 1.55%) | +195万円 | −196万円 |
金利 1.00% では手元に置くほうが 195万円 多く残り、2.50% では繰上返済が 196万円 多く残ります。答えが入れ替わります。
どちらも利率が35年変わらないとした計算です。実際にはローンの金利も国債の利率も半年ごとに動きます。この二つは同じ方向へ動きやすいので、片方だけが跳ねる心配は小さめです。
住宅ローン控除は、年末残高と借入限度額の小さいほう × 0.7% が戻る仕組みです。控除期間は新築で最大13年。
よく「控除の間は繰上返済しないほうがいい」と言われますが、正確ではありません。残高が借入限度額を上回っているうちは、繰上返済しても控除は減りません。
2026年入居の省エネ基準適合住宅なら限度額は 2,000万円(子育て世帯 3,000万円)。4,000万円借りているなら、残高が 2,000万円 を下回るまで控除は 140,000円/年 のままです。
効いてくるのは、残高が限度額に近づいてからです。そこから先は、繰上返済の利回りが ローン金利 − 0.7% まで下がります。金利 1.00% なら 0.30%。ほとんどの置き場所に負けます。
ここまでは利回りの話です。でも、いちばん大きな違いは利回りではありません。
繰上返済はいつでもできます。でも、戻せません。
手元のお金を返済に充てれば、その分は住宅という動かせない資産に変わります。あとで失業しても、病気になっても、子どもの学費が要っても、そのお金はもう手元にありません。
そして、住宅ローンの金利でもう一度借りることはできません。住宅ローンがあの金利で借りられるのは、家を担保に入れているからです。使いみちが自由なお金を借りようとすれば、金利は何倍にもなります。
繰上返済を1年遅らせて損するのは、利息の1年分だけです。手元のお金を失って困るのは、そういう桁の話ではありません。この二つは釣り合いません。
一つめ。生活を守るお金を先に確保します。ここは利回りで比べる対象ではありません。
二つめ。残高が借入限度額を下回るまでは、控除が減らないぶん繰上返済の効きが良い時期です。ただし急ぐ理由もありません。
三つめ。ローン金利と、置き場所の税引後利回りを見比べます。いまの変動 1.00% なら手元に置くほうが勝ち、1.55% を超えたら繰上返済が勝ちます。変動なら金利が上がるほど、繰上返済の魅力はひとりでに増えていきます。
繰上返済はあとからいくらでもできます。急いで決める必要があるのは、こちらではありません。