ローン天秤loan-tenbin
変動と固定を比べるとき、たいてい二つのことが同時に変わっています。金利と、毎月払う額です。変えるのを一つにすると、答えが変わることがあります。
2026-09-22(2026-09-25 に、左右の高いほうへそろえる形で計算し直し)
4000万円を35年で借ります。全期間固定 3.46% なら毎月 164,391円。変動は 1.00% で借りて 112,914円。借りたときの差は毎月 51,477円です。変動はそのあと5年で 4.00% まで上がるとします。差は金利が上がるにつれて縮み、4年半で逆転します。
ふつうの比較は、この差を放ったまま総返済額だけを並べます。
でも浮いたお金はどこかへ行きます。使えば残りません。貯めれば別の資産になります。返済に回せばローンが早く終わります。どれを選んだかで答えが変わります。総返済額だけを並べる比較は、黙って「使った」を選んでいます。
そこで、毎月払う額を、左右の高いほうにそろえます。はじめは固定の 164,391円 のほうが高いので、変動でも 164,391円 を払い、要る額との差はそのまま繰上返済します。変動の要る額が固定を超える月が来たら、今度は固定がその額を払い、差を繰上返済します。どちらの皿も、毎月同じ額を払い続けます。
これで変わるのは金利だけになりました。差は完済までの期間と総返済額にしか出ません。上がり方は最初と同じ、5年で 4.00% までです。
| 比べ方 | 変動の総返済額 | 固定の総返済額 | 固定との差 |
|---|---|---|---|
| そのまま並べる | 7,033万円 | 6,904万円 | 変動が 128万円 多い |
| 返済額をそろえる | 6,892万円 | 6,904万円 | 変動が 12万円 少ない |
符号が入れ替わります。「+3pt まで上がるなら固定が正解」という結論は、金利の差から出たものではありません。浮いたお金を数えていなかったから出ていました。この道筋では、変動は繰上返済で残高が先に減るので、4.00% になっても要る額が固定の 164,391円 を超えません。固定の皿は最後まで何も変わりません。
都合のいい話ではありません。もっと急に上がれば、そろえても結論は変わりません。むしろ差は開きます。
| 比べ方 | 変動の総返済額 | 固定の総返済額 | 固定との差 |
|---|---|---|---|
| そのまま並べる | 8,851万円 | 6,904万円 | 変動が 1,947万円 多い |
| 返済額をそろえる | 8,722万円 | 6,029万円 | 変動が 2,693万円 多い |
3年目には変動の要る額が固定の 164,391円 を超えます。そこからは固定の皿が変動と同じ額を払い、差を繰上返済します。固定は 24年6か月 で返し終わり、総返済額は 6,029万円 まで下がります。差は 746万円 開きました。これは変動を勝たせるための小細工ではありません。払う額を左右でそろえ、金利以外の違いを取り除くだけです。浮いたお金を数えるのは、変動の側だけではありません。
では、どこまで上がったら固定が勝つのか。効くのは二つです。どれくらいの速さで上がるかと、どこまで上がるか。二つ同時に動かすとまた混ざるので、一つずつ見ます。
上がりきる高さを、固定より 0.5pt 高い 3.96% に決めます。あとは速さだけを変えます。
| 上がりきるまで | 年あたり | 日銀の利上げ | 固定との差 |
|---|---|---|---|
| 2年 | 1.48pt | 年5.9回 | 変動が 443万円 多い |
| 3年 | 0.99pt | 年3.9回 | 変動が 269万円 多い |
| 4年 | 0.74pt | 年3.0回 | 変動が 97万円 多い |
| 4.6年 | 0.64pt | 年2.6回 | ここが分かれ目 |
| 6年 | 0.49pt | 年2.0回 | 変動が 248万円 少ない |
| 10年 | 0.30pt | 年1.2回 | 変動が 804万円 少ない |
| 20年 | 0.15pt | 年0.6回 | 変動が 1,611万円 少ない |
1.00% から 3.96% までは 2.96pt。日銀の利上げは1回 0.25pt なので 12回ぶんです。これを 4.6年でやるかどうか、年2.6回が境目になります。
日銀は 2024年も 2025年も 年2回でした。このペースなら上がりきるまで6年。変動が 248万円 少なくて済みます。この高さで止まるなら、固定が勝つには今より速い利上げが要ります。
今度は高さを変えます。止まるところが高いほど、固定はゆっくりでも勝てます。
| 上がりきる高さ | 分かれ目 | 年あたり | 日銀の利上げ |
|---|---|---|---|
| 3.96%(固定+0.5pt) | 4.6年 | 0.64pt | 年2.6回 |
| 4.50% | 9.1年 | 0.38pt | 年1.5回 |
| 5.00% | 12.5年 | 0.32pt | 年1.3回 |
| 6.00% | 18.3年 | 0.27pt | 年1.1回 |
高さを 3.96% から 6.00% に変えると、必要なペースは 年2.6回から年1.1回 まで落ちます。固定が勝つ条件は「速く上がる」ことより「高く上がる」ことでした。ただし年1回のペースなら、6% まで上がっても変動が 363万円 少なく済みます。固定が勝つには、高く上がるうえに、年1回より速く上がることが要ります。
つまり固定を選ぶのは、高いところまで行くほうに賭けることです。速さは思ったほど効きません。
借入期間が短いほど固定は不利になります。安い時期の取り分が小さいからです。3.96% で止まる場合の分かれ目は、35年で年2.6回、25年で年3.5回、20年で年4.4回。20年ローンなら、ほぼ考えにくい速さの利上げが要ります。
天秤では「毎月の返済額を揃える」にチェックを入れると、この状態になります。分かれ目より速く上がる行で差が大きいのは、変動の要る額が固定を超えた月から、固定の皿も差を繰上返済するからです。分かれ目そのものは動きません。そこでは変動が先に残高を減らしていて、要る額が固定を超えないからです。
決めることは二つあります。
一つめ。固定か変動か。これは払う額をそろえて、金利だけで比べます。上で見たとおりです。毎月、左右の高いほうの額をどちらの皿も払い、低いほうは差を繰上返済に充てます。浮いたお金はどちらの手元にも残りません。残る違いは金利だけになります。
二つめ。変動にしたとして、浮いたお金をどうするか。繰上返済か、運用か、貯蓄か。これも同じ土俵で比べる話ですが、答えは金利の選び方とは別のところにあります。
ふつうの比較は、この二つを混ぜています。「変動は毎月が安い」と言いながら、浮いた分を使ってしまったことにして総返済額を並べる。一つめの問いに、二つめの答え(使う)をこっそり入れているわけです。
混ぜると、どちらも決まりません。出てきた差が金利のものなのか、浮いたお金の使い道のものなのか、分けられないからです。
まず金利だけで比べる。決まったら、次に浮いたお金の行き先を比べる。一つずつです。
この道具が量れるのは一つめまでです。「そろえる」は浮いた分を全部繰上返済に回した場合で、運用や貯蓄に回した場合は扱っていません。二つめは利回りの前提が要るので、別の話になります。